ひちゃこさま宅メルンくんお借りしました!
大変遅くなってしまって申し訳ないですすみません!!ご本人様のみのお持ち帰りでお願いします
大変遅くなってしまって申し訳ないですすみません!!ご本人様のみのお持ち帰りでお願いします
クロモリの格好をしたぼくは、当然頭のてっぺんから足のつま先まで真っ黒で、
なんだかそのパーティーに参加している人たちに比べて、スタートダッシュで出遅れたような、そんな気持ちで突っ立っていた。
オレンジ色に包まれた華やかな会場は、いろんな仮装をした人たちでわいわいと溢れかえっていた。
ぼくも本当は妹のクランとかアークスを連れてきたかったんだけど、二人は衣装の準備に戸惑って、まだ会場にはついていない。
ぼくはハロウィンのパーティーがあまりにも楽しみで、浮かれた気分でそのまま一人で飛び出してきちゃったんだ。
でもこうやってぽつんと立ちつくしていると、どうして二人を待たなかったのか悔やまれる。
ぼくがため息をつきながら会場を見つめていると、突然横から真っ白いものがどん、と体当たりしてきた。
あまり痛くはなかったけれど、その衝撃で僕は少しよろめいて、うわ、と口から声が出る。
白いものは現れたときと同じように、突然ぺこりと頭を下げた。
「あっ、ごめんなさい」
白いシーツをかぶったおばけだ。
正確には、おばけの仮装をした子供。ぼくと同じくらいの背だったから、なんだ、とちょっぴり安心した。
「怪我はない?」
白いおばけは両手をつきだして言った。
ぼくが、大丈夫、と呟くとおばけはのんびりとした声で言う。
「おばけの格好してるんだけど、シーツで前が見えなくって」
そう言いながらおばけはもぞもぞやりだして、
シーツの下からはおかっぱ頭の少年が出てくる。
その手に抱えられたバスケットには、色とりどりのお菓子がたくさん入っていた。
「クロモリだ!」
ぼくの姿を見るなり彼はぱっと顔を明るくした。
その顔が、ぼくの心にちょっぴり元気をくれる。
「そうだぜ!クロモリの格好なんだ。きみは真っ白だけど、ぼくは真っ黒さ!」
わざとそう胸を張ったら、その子は嬉しそうに手をぱちぱちした。
クロモリってうちにいないから、こんなすぐ近くで観れて嬉しいなあ、羽根ってこんな風になってるの?、すごいや、
ぶつぶつとそう呟きながら、彼はあちこちぼくの衣装を引っ張ったりつついたりする。
白いおばけのシーツを抱えて、その子はぼくの周りをぐるぐる歩いた。
「すごいねえ、これ…僕もクロモリにすればよかったなぁ」
そうしたらちゃんと前も見えたし…あのシーツね、しょっちゅう誰かにぶつかっちゃうんだよ。
ひとしきりそのぐるぐるが終わり、ぶつぶつ言うのに気が済むと、
愚痴をこぼすように彼はそう言って、のんびりした顔で微笑んだ。
「僕は鯉壱。お魚の鯉に難しいほうの壱で鯉壱だよ」
「あ、えっと、ぼくはメルン……メルン・エールっていうんだ」
難しいほうの一、という漢字を思い出そうと頭を使っていたら、ぼくは鯉壱に返事をするのが遅くなってしまった。
本当はもっとカッコよく自己紹介したかったけど、ぼくの名前はカタカナだから、カッコいい言い方が見つからない。
でも鯉壱はきょとんとした顔でぼくを見つめると、メロン?と首を傾けるから、
ぼくは慌てて鯉壱に訂正を入れた。
「る。メロンじゃなくて、メルン」
「あ、メルンかあ、ごめんね」
「ううん、いいんだ。ぼくメロンも大好きだから…じゃなかった、大好きなんだぜ!」
のんびり微笑む鯉壱に、ぼくはなんだかカッコつける余裕もなくて、
慌てて付け加えた最後の言葉も、鯉壱の笑顔にふんわり消されてしまった。
なんか、調子くるっちゃうぜ。心の中でだけしっかり語尾を整えてから、ぼくは鯉壱のゆるい笑顔を見つめた。
鯉壱はまたのんびりとした口調で口を開いてぼくに質問する。
「メルンはメロンが好きなの?」
「え、うん。好きだよ。……だぜ。甘いし、美味しいよな!!」
喉まで出かかった「名前も似てるし、」は、どうにかこうにか無理矢理飲みこんだ。
鯉壱はぼくの言葉を聞くなり、本当?と声をあげてそれならいいものがあるよ、と手に持っていたバスケットをガサガサやりはじめる。
ぼくがそれを口を開けてぽかんと見つめていると、鯉壱はその手に小さなものをつまんで僕に見せた。
「じゃーん!さっき貰ったの。メロン味のキャンディだよ」
「えっ、本当?」
鯉壱の手につままれた、緑色の包み紙に包まれたそのフォルムにぼくは釘づけになる。
微笑む鯉壱にありがとう、と口にして手を伸ばしかけたら、突然鯉壱はふいっとその手を上にあげてしまって、
大好きなメロン味のキャンディは、あっという間にぼくから離れたところまで行ってしまった。
「なんだよ鯉壱!くれるんじゃないのか?!」
まさかの鯉壱の意地悪に怒ってそう口にすれば、くすくすと笑いだしそうな笑顔のままの鯉壱は、
ぼくにわざと顔をしかめて見せてからこう言った。
「忘れたの?メルン。今日は、ハロウィンだよ!」
一瞬鯉壱が何を言いたいのかわからなかったぼくは、ぽかんと口を開けたまま、
でもそれからその言葉の意味を理解すると、思わず勝手に口が笑ってしまった。
ああ、そっか。
今日はハロウィン。お菓子を手に入れるには、合言葉が必要なんだった。
それからぼくは、にっこり笑った鯉壱の笑顔に向けて出来るだけ低い声を出し、彼を脅すように言ってみた。
今日はハロウィン、一番最初にぼくが手に入れたお菓子は、ぼくの大好きなメロン味のキャンディ。
ぼくはそれを今すぐ食べてしまおうかと一瞬思ったのだけれど
あいつらが来たら、自慢してやるんだ。
そう思ったら口元は勝手に小さく笑って、ぼくの意志じゃ止められなくなっちゃったから、
そのまま緑色のキャンディは、ぼくのポケットに滑り込んだのだった。
ハッピー・グリーン・ハロウィーン
(トリックオアトリート!!)***
ひちゃこさま宅メルンくんお借りしました! 大変遅くなってすみません!!ここで土下座しておきます!!!ゴリゴリ 今回お借りしたメルンくんは名前が似てるからという理由でメロンが好き、というなんともかわいいお子さんでハァハァ な、なんてかわいい子なんだこの子は!!とドキドキしながら書かせて頂きましたメロン私も好きよ…!!(( 子犬のようなメルンくん、マイペース鯉壱にはちょっぴり見栄を張りつつも、キャンディを見せたときのキラキラした目の輝きが想像できてああもう(人はそれを妄想と呼ぶ) とにかく書いていてとても楽しいお子さんでした!! お名前だけですがメルンくんの妹クランちゃん、そしてパートナーの(これまた可愛らしい設定の!!)アークスさんもステキな方たちなのでいっしょにハロウィン楽しんでくれるだろうなと(もう12月ですすみません土下座)勝手にお借りしてしまいましたが…!! 宜しければお持ち帰りください´ω` メルンくん、パーティーに来てくれてありがとうございました! ひちゃこさま、ステキなモデルさんをどうも有り難うございました** また機会がありましたら宜しくお願いいたします~:)
* comment